中華食堂熊谷



恥ずかしながら担々麺




中華食堂熊谷。店名の下の年号は創業年。「担」の字が・・・?


担々麺との出会い
暖簾にかかる「担」の文字。この文字から連想される通り、中華食堂熊谷の「こだわりの一品は担々麺」、と控えめに語る熊谷さん。


 熊谷さんが担々麺に出会ったのは、東京へ修行に行った時の事。陸前高田にいた頃は担々麺を知らなかった熊谷さん。カルチャーショックを受けたと言う。陸前高田に帰ったら担々麺をぜひ紹介したいと思った。11年間東京にいたが、その思いがあせることはなかった。でも、帰ってきた頃の陸前高田ではまだ「担々麺」が浸透していなかったので、担々麺はメニューの一番下の端に書き入れるひっそりしたスタートだった。ところが、岩手日報の紙面に取り上げられると、口コミで広がった。今ではメニューの一番上に収まる担々麺(白)、そして担々麺(黒)だ。熊谷さんは、「いつか担々麺を目立たせたいと思っていた」、と満足げに語る。




調理中の熊谷成樹さん





担々麺(白)720




担々麺(黒)720


ひっくり返った暖簾の意味とは
 もしかしたら暖簾の写真を見て違和感を覚えた人もいるかもしれない。そう「担」の字が裏返っているのでは?と。熊谷さんによると、暖簾の表側は日に焼けて色が薄くなってしまったが、裏の色が無事だったことから新しい暖簾をつくるまで、裏返して使い続けるのだそうだ。でも、これはこれで逆さ看板だと前向きにとらえることにしているという。

 最近は「杏仁豆腐」の「杏」なら裏返しても気にならないということで、もう一枚暖簾を作ることも視野に入れているとか。担々麺と並び、手づくり杏仁豆腐も中華食堂熊谷のおすすめメニューの一つ。担々麺の辛さは杏仁豆腐の甘さを際立たせる。ぜひとも、この辛さと甘さの絶妙のコントラストを楽しんでもらいたい。






手作り杏仁豆腐250


震災当時について

 中華食堂熊谷は、創業時の1940年から陸前高田駅前に店舗を構えていた。震災当時も営業していたが、お昼時を過ぎていたためお客さんはいなかった。熊谷さんは従業員と「ご飯どうしようか」と話していた。大きな揺れを感じて外に出た熊谷さんは、「明日営業できるかな」と話していた。

  熊谷さんは、一人残って片づけをしていたため、避難が遅れてしまった。波に追いかけられながら車で逃げたという。前には車、ミラー越しに波の迫ってくる様子が見えた時は、さぞ肝を冷やしたことだろう。「早く前に行ってくれないかな」と焦った、と当時を振り返って語ってくれた。





 

震災前の陸前高田駅の写真(左)と

  動く七夕の写真(右)がレジの前に飾られている。




将来の店やまちへの思い

中心市街地の「まちなかテラス」に出店することを決意したのは、同じく「まちなかテラス」に出店している「いわ井」さんの誘いがあり、他の仲間と共に一緒にやっていこう、という思いが強くなったからだ、と熊谷さんは語る。ここに移転してからは仮設店舗の時よりもお客さんが増え、忙しくなった様子。

お店の将来については、「空き店舗ができてしまわないよう、うまく世代交代が出来ればいいな」と語る。まちなかテラスに入っている他の店はすでに二代目に移行しており、熊谷さんは「違う店でもいいから何かしら店を置くことが最低限。ただでさえコンパクトになったまちなのに、虫食いのように店舗がなくなってほしくない」と語る。



「陸前高田のリアルをみてほしい」

多くの人のおかげで今がある。日本全国津々浦々の人々の税金でできているグループ補助金をいただいたことに申し訳なさを感じるという。インタビューの機会は、そういう方々に対する感謝や、みんなのおかげで再建が出来たと再確認できるいい機会だと言う。

ひと言で被災地域と言っても、被災の程度にはばらつきがある。それを百聞は一見に如かずではないが、多くの人に見に来てほしい。実際に行ってみなければわからないことがある。復興に向かっている陸前高田に来て、リアルを見てもらえたらなと熊谷さんはしみじみ語る。



 

インタビューに答える熊谷さん




店名:中華食堂熊谷

住所:陸前高田市高田町字馬場前73

営業時間:11001500

定休日:毎週月曜日

取材相手:熊谷成樹さん

インタビュー実施日:2018918





【自己紹介】岩手大学、M.S.

 岩手県陸前高田市出身。岩手大学人文社会科学部三年。今回は地元への取材ということで張り切りました。久しぶりに地元に帰ってきて、まちの様子がガラリと変わっていて驚きました。また取材で中央市街地を歩き、まちの人のお話を聴き、多くの人の支援を受けながら、新しいまちをつくっていこうとする人々の活力に触れ。これから始まる新しい陸前高田を見守っていきたいです!






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