特定非営利活動法人 高田暮舎

「陸前高田と人をつなぐ」


移住者が住みよい環境づくりを


 特定非営利活動法人 高田暮舎(たかたくらししゃ)では「あなたに提案したい暮らし。」として、陸前高田市への「移住定住」を考える方を対象とした事業を行っている。
 「移住者の支援」。陸前高田への移住を検討する方に「移住後の仕事案内」「移住者サポート」を行い、移住者がよりスムーズに高田での暮らしに馴染むことができるよう支援をしている。
 次に、「空き家バンク」事業。高田にある空き家の「所有者」と「利用希望者」の間をつなぎ、物件取扱業者(登録している不動産・建設会社)に仲介してもらいながら空き家の売買・契約を行っている。
 そして「情報発信」。住居の情報、移住者へのインタビュー、フェイスブックの投稿など。高田暮舎が運営する移住定住ポータルサイト「高田暮らし」にはこれらの情報が豊富に掲載されており、移住を考える際の参考になること間違いなしだ。
 これらは、陸前高田市からの委託事業として行われています。

私たちも移住者の一人


 今回お話をうかがったのは、高田暮舎で働く 松田道弘(まつだみちひろ)さん 田中大樹(たなかひろき)さん 山﨑風雅(やまざきふうが)さん の3名。 
 彼ら自身も震災後に外から陸前高田市へ移ってきた移住者である。

 松田さんは岩手県遠野市出身で2019年4月に移住してきたばかり。ボランティアの活動で高田の仮設を訪れたことがあり、学生時代から興味のあった「まちづくり」に関わるため、地域おこし協力隊の活動に参加したいと考えていたそう。

移住者支援を担当する松田さん 

 田中さんは長崎県出身で、松田さんと同様2019年4月に陸前高田へ。岩手へ来ようと思ったきっかけは、友人の「復興期間10年を、『被災地』の10年ではなく『面白いことをやっている陸前高田』の10年にしたい」という言葉。その言葉の通り「わくわくする」高田をつくるため、陸前高田と人が関わる仕組みづくりを考えているところだそう。

空き家バンク事業を担当する田中さん 

 山﨑さんは神奈川県出身。大学2年生の時にNPOの活動で陸前高田を訪れたのがきっかけだが、引き続き陸前高田にいたいと思い、高田暮舎のスタッフとして活動することにした。移住の決め手は、一次産業に興味があったことと、神奈川県では経験しづらい「自然と近い生活」が送れること、そして何より「縁」があったこと。

サイトの運営など情報発信を担当する山﨑さん

移住を考える人とは:  そもそも、移住者の方はどのようなことをきっかけに陸前高田へとやってくるのか。そこには3つのタイプがある、と高田暮舎では考えている。

 「チャレンジタイプ」。学校・職場などの環境を飛び出し、新しい環境で挑戦してみたいと考えている人。
 「ライフスタイルタイプ」。理想のライフスタイルを求めて陸前高田へやってくる人
 「チェンジタイプ」。自分の個性を認めてくれる場所、自分の居場所を求めている人。

 3つのどれかに当てはまる方もいれば、「ライフスタイルタイプ」と「チェンジタイプ」に当てはまるというような場合も。中には、震災後に陸前高田市でのボランティア活動に参加しているうちに移住するに至った方もいるとか。

陸前高田は挑戦できる場所


 「陸前高田は、新しいことに挑戦しようとする人に向いている場所!」、と山﨑さんは語る。

 「ここには余白がある。色々なものが新しく作り替えられたり、建て直されたり、まだまだ伸びしろがあります。人も多くないし、色々なものが未だ整っていないからこそ、一人一人の影響力が大きくなれる状態なのだ、と思っています。震災後、外から人が入ってくるようになり、高田市内の各地域にも新しい人が入った。陸前高田は人が集まる地域になり始めていて、さまざまな人が協力しつつあります」

「ポジティブな過疎地」を創る=高田暮舎のビジョン


 さらに、インタビューの最中、田中さんが「過疎」という言葉を挙げた。「さみしい」「活気が無い」などネガティブな印象を受けやすいこの言葉も、視点を変えると全く違ったものに見えるようだ。

 「陸前高田市には、田舎のまち特有の『貨幣を介さない物のやりとり』があります。畑で取れた野菜や海産物をいただいた時に、お返しとしてお金をお渡しするのではなく、『ありがとうございます』という感謝の気持ちや、いただいたものを料理してお返しする、などという形でお礼の気持ちを表すんです。

 この『ものを送り、ありがとうで返す』という、お金ではない違った価値で交換する関係が、この町にはあります。

 余白が多い、ということにも通じますが過疎地であるということは、一つ一つの要素に対する人々の影響力が大きい状態にあるということ。陸前高田のまちづくりに大きく貢献できるということです」

高田の魅力は 人 にあり!


 記事を読む方へのメッセージをうかがうと「陸前高田は住む人に魅力がある街」と3人は口をそろえる。

 「復興がまだ完成されていない中でこんなにも人を呼べるのは、街の人の影響力が大きいから。人を見て欲しい」。「陸前高田の魅力は人にある。街の人一人ひとりにどんなストーリーがあるのか知ってほしい。とっても魅力的です」。

終始にこやかな高田暮舎のみなさん

 そうしたうえで、今後、高田暮舎の活動を継続していくにあたりキーとなるのは「気軽さ」になるようだ。
 「陸前高田の人とはもっと近い関係になりたい。『こういうすごいことやってるからもっと取り上げてよ!』などと積極的に言ってもらえるような関係になりたいです。
 高田の外の人に関しても気軽に相談してほしいです。移住相談が『ハードルの高いもの』のようには感じてほしくない。気軽に連絡を取るような感じで、何かあったら声をかけてくれるような関係に。」

 人と人との関わり合いの積み重なりである「暮らし」をテーマとして活動する高田暮舎だからこそ、陸前高田の人がどのような人たちであるのかを彼らはよく見ているのかもしれない。

 これからの陸前高田に興味があるという方、移住生活を始めたいと考えている方は、悩むよりもまず先に「高田暮舎」に連絡をしてみてほしい。


インタビュー先


▷総合受付:080-6292-3865
▷受付時間:午前9時~午後8時(業務等のため受けられない場合は折り返し連絡)
▷E-mail:info@kurashisha.org
▷URL:https://takatakurashi.jp
 【取材先】特定非営利活動法人 高田暮舎
 【取材日】2019年9月9日(月)

インタビューの感想


 陸前高田市が開かれた街になりつつあると感じた。それはこの街の人々が外に向けて開いているからなのかもしれないし、外から陸前高田へ来た人が中と外の橋渡し役として積極的に活動しているからなのかもしれない。今後、この街はどのような場所になっていくのか。「外」と「中」という言葉さえなくなって、人と人が絶え間なく行き来するような活気ある街になるのかもしれない。 
 高田暮舎には、たくさんのわくわくと陸前高田への愛を抱えた人たちがいた。
(岩手大学 石橋奈那子)

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