小谷園茶舗

『お茶』一筋



店主の小谷隆一さん

高田の風土と水に合うお茶を


 店に足を踏み入れると、ご主人である小谷隆一さんと奥さんが温かく迎えてくれる。
 小谷さんで3代目となるお店は、長きに渡って地元の住人に愛されてきた。ここでは、高田の風土と水に合わせて、代々、静岡県掛川のお茶を専門に、急須や湯飲みなどの関連商品も扱っている。お茶は、そのまま売るだけでなく、掛川以外の産地のお茶をブレンドして販売し、昔からの味を受け継いでいるそうだ。


お茶と関連商品の陳列棚

大好評!抹茶入り玄米茶と気さくな店主


 取り扱っているお茶の種類は豊富で、中でも、500円の買い求めやすい煎茶とこだわりの深い煎茶『利久』が人気だという。特に評判が良いのは、静岡のお茶に京都の宇治抹茶をブレンドした抹茶入り玄米茶だ。この商品は、その味わいの深さと手頃な値段から根強い人気を集めている。
 また、魅力的なのは、お店自慢のお茶を味わいながら気さくな店主との会話に花を咲かせることができる点だ。お店に立ち寄った際には、こだわりのお茶と店主の温かい人柄で、喉も心も満たされる違いない。

おもてなしのお茶

生死を分けた数分

 防災無線が故障したことや震災の2日前の大きな地震で津波が来なかったこともあり、近所を始め多くの住人が逃げ遅れたという。家族と避難した小谷さんも「あと数分遅ければ…」と、当時を振り返っていた。まだ冬の寒さが残っていた震災当時、避難先の火葬場では、お菓子や地下水の共有など避難者同士の助け合いで難を免れたという。小谷さんは、そこでおよそ10日間を過ごした。

アルバムを開いてインタビューに答える小谷さん

「仮設で終わるわけにはいかない」


 震災で店舗に甚大な被害を受けた小谷さんは、補助金などの国の支援が後押しとなり、3軒の仮設店舗を転々としながら、再び本設の店舗を構えることに成功した。「昔のようにやれるうちはやっていきたい」、「仮設で終わるわけにはいかない」という小谷さんの強い意志が、その背景には存在していた。当時、2、3年で元に戻るだろうと考えられていたが、結果的に、地権者との交渉が難航したことやかさ上げ工事の影響によって、現在の店舗が完成するまでに約8年もの時間がかかってしまった。8年という時間は、高田での商売を再開する人々にとって非常に長いものであり、多くの人がその時を待つことができず、盛岡や一関などの内陸へ移動してしまったという。

中心市街地付近に出店してみて


 現在の店舗は、高田を訪れる人にわかりやすい場所にあるため、常連さんから新しいお客さんまでがよく来店するようになった、と小谷さんは嬉しそうに語った。その一方で、店舗と住まいが分かれてしまった分、生活費の負担が増加し、大変だったという。小谷さんは、現状に一定の満足感を示しつつも、朝から夜まで人の行き来で活発だった以前の商店街を懐かしんでいた。

支援からの自立へ


 震災発生から沢山の支援を受けてきた高田は、自立していく時期に差し掛かっていると、小谷さんは語った。また、外部からの支援に頼るだけでなく、以前のような地域のコミュニティを再構築することが必要だと訴えた。

「高田へ帰ってきてほしい」



 震災から約8年が経過した今、高田は業種に関係なく深刻な人手不足に悩まされている。さらなる復興にとって貴重な存在である若者の流出と全体的な人口の減少が進む中で、「高田へ帰ってきてほしい」と小谷さんは何度も繰り返した。しかし、若者が希望する職の受け皿が少ない現状では、「帰ってきてほしい」と簡単に言うことが出来ない現実が存在しているようだ。
 陸前高田を訪れた際には、ぜひ小谷園茶舗に立ち寄っていただき、気さくで温厚な店主の小谷さんとお茶を交わしながら一息ついてみてはいかがだろうか。

小谷園茶舗外観

インタビュー先


▷店名:小谷園茶舗
▷定休日:水曜日
▷営業時間:9:30~18:30
▷電話番号:0192-55-2541
▷取材相手の氏名:小谷 隆一 様
▷インタビュー実施日:2019年9月9日(月)

インタビュアーの自己紹介


岩手県立大学 総合政策学部 1年 遠藤春花
 今回の陸前高田への訪問は、現地の様子を実際に目で見て聞いて感じ、能動的に学びを深める非常に良い機会となった。今回、取材させていただいた小谷園茶舗の店主の小谷さんの高田への強い思いに触れ、多くのことを考えさせられた。
 以前に陸前高田を訪れたことのある方もそうでない方もぜひ足を運んでいただき、純粋に高田を観光して多くの魅力を発見し楽しみつつ、現地の方々と交流することで、復興の様子を体感していただけたら幸いに思う。

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