h. IMAGINE
陸前高田は捨てたもんじゃない
素敵な空間でゆったりとしたひと時を。
赤い装いのお店に近づくと、開け放たれた窓からジャズが聞こえてくる。音色に誘われ、店内に入れば、コーヒーの香りとともにマスターの冨山さんが笑顔で迎え入れてくれる。とても落ち着いた気分になった。暖色を基調とした内装とインテリアなどのカラーコーディネートは女性に気に入ってもらえるように考えたそうだ。
お店の自慢は何といっても、おいしいコーヒーと紅茶だ。マスターの一番だと思う豆を、一番おいしい焙煎度合いで淹れてくれるコーヒーは、適度な苦みと酸味でとても飲みやすい。私個人の感想であるが、これを飲んだら最後、大手チェーンの物は飲めなくなってしまうほど感動した。紅茶もまた、一流ホテルご用達の葉を使った、こだわりの逸品となっている。フードメニューには、健康志向の薬膳カレーやビーフ100%のビーフハンバーグなどが用意されている。
読者の皆さんも、ジャズを聴きながら、おいしいコーヒーを飲むという素敵な時間をここ「h. IMAGINE」で過ごしてみてほしい。
二階には!?
二階はゴロ寝宿泊用の施設となっており、個人用のテントが設置されている。ロフトにつながる梯子もあり、まるで秘密基地のような空間で、子供心をくすぐられる。テントの狭い個人的空間は安心感があり、すぐに眠りにつくことができるだろう。陸前高田の町を観光した後、夜はイマジンでゆっくり楽しみ、一泊するというのも良い旅行プランではないだろうか。宿泊は予約制となっているので電話を忘れないように。
店名「h. IMAGINE」の由来
冨山さんは、店名を考えた際、「これからは『暇人』になるのか」と思い、「h」と「IMAGINE」を分離させたギャグをひらめいた。特に「IMAGINE」の方には、ジョン・レノンの代表曲にもあるように、「愛と平和」という素敵な思いが込められている。
これまでの歩み
もともとは大船渡市の碁石海岸でジャズ喫茶を営んでいたが、火災で焼失してしまった。そんな中、旧高田町役場解体の話があった。古き良き建物を守りたいという、地元の人の思いを聞いて、冨山さんはその建物を気に入り、改装し、2代目店舗として2010年12月にオープンした。しかし、津波により3か月も経たずに失ってしまうこととなる。
震災当時は、営業中でお客さんもいたという。冨山さんは、お客さんを家に帰すと、防災無線で津波が来ることを知り、近くの高台へ避難した。津波を見て、木材の折れる音や舞い上がるホコリに圧倒された。1~2時間経って、避難所となっている近くの中学校へ移動した。
ジャズ喫茶を続けることを決めていたが、土地が準中央商業地区に区分されるため、かさ上げが後回しになったことと、スケジュールの遅れにより、再建には時間を要した。かさ上げが終わるまでの間は、仮設店舗とボランティアを受け入れる宿泊施設を営業し、活動していた。そして、2019年6月に土地の引き渡しが行われ、同年10月にオープンを果たした。
これから
コロナ禍に影響され、中央商業地区と準中央商業地区への集客が乏しいのが現実だという。冨山さんは、復興記念公園と道の駅を訪れる客を商業地区へ招く方策を考えていた。その発想力と頭の中の引き出しの多さには、話を聞きながらとても驚かされた。
「捨てたもんじゃない」
「陸前高田の若者も老人も全力で頑張っている。無い知恵を絞って、一生懸命人生を謳歌している。陸前高田のありのままの姿を見てほしい。」と、冨山さんはおっしゃった。私も現地で活動してみて、震災なんてあったのだろうかと疑うほど、陸前高田の人々は活気に満ち溢れていた。
若者へ
最後に、我々若い世代へのメッセージをいただいた。「まず、芸術でもなんでも素晴らしいものを見て、聞いて、感じてほしい。それを通して、分野に秀でた人たちの考えや人生に触れることで、自分自身の生きる道が開けやすくなる。好き嫌いなんて言わずに、いろいろな世界に食いついていってほしい。ただ映像とか本の中で見て感じるだけではなく、体験して実感してほしい。体験して初めて理解が深まって、開けるものがあるのだから。人生イメージ通りにいくことなんて少ないのだから、今その瞬間を最大限楽しんで生きてほしい。失敗しても、自分の限界値を把握できるし、成功への手掛かりとなるのだから。皆さんには早く気がついてほしい。」と、冨山さん自身が若いころにできなかったことをお話ししてくれた。
インタビュー先
店名:h. IMAGINE
所在地:〒029-2205 陸前高田市高田町本丸29-2
定休日:不定休
営業時間:10:00~22:00(ラストオーダー)
電話番号:090-3527-0700
メール:tomiyama.kats@gmail.com
URL: https://sites.google.com/view/h-imagine/home
取材相手の氏名:冨山 勝敏 さん
インタビュー実施日:2020年9月22日(火)
インタビュアーの自己紹介
岩手大学教育学部 1年 千田衛之介
陸前高田には、4年前に高校の復興学習で行ったきりだった。その時の暗いイメージは、今回の取材できれいに払拭された。道路や商業施設などのハード面が充実しただけでなく、地域の人の活気があった。その活気を読者にも感じてほしい。
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