カキ小屋 広田湾

「広田のカキ、食べでみらい」


カキ小屋 広田湾


 商業施設や飲食店が並ぶ陸前高田の中心市街地に、新鮮なカキを食べることのできる店がある。「カキ小屋 広田湾」。
 震災後、広田湾を眺めながらカキを食べられる場所として運営していた以前のカキ小屋だったが、防潮堤の建設により見える景色が変わってしまった。カキ小屋をやめようかと考えていたとき、知り合いに薦められたのがきっかけで現在の店舗に。
 店のおすすめメニューは、お袋の味「カキの炊き込みごはん」「かき汁」がついた「カキ満喫御膳」。
カキ満喫御膳。蒸したての殻付き
カキをナイフで開いていただく

 「生ガキ」はふっくらと濃厚クリーミー。
ガキ(小)324円。3年ものの岩ガキ(写真 岩がき)

 「カキグラタン」や「海鮮丼」も人気だ。
カキの風味とホワイトソースが
絶妙のハーモニーを奏でる

本職はカキ漁師!


 今回インタビューさせていただいたのは、カキ漁師の藤田敦(ふじた あつし)さん。今ではいかにも「海の人」という印象の藤田さんだが、以前は、朝、カキ養殖の作業を済ませてから家具屋の仕事に出向く暮らしをしていたらしい。
  インタビューの途中で実際に船に乗せていただき、養殖のいかだを見せてもらえることになった。
 海にはたくさんのいかだが浮かんでいて、その一つ一つを見ると、いかだに吊るされた紐にカキがびっしりとついている。2年ものと3年ものでは貝の大きさが全く異なり、さらにカキを太らせる行程を経たものは、より厚みが増していた。
カキについて説明する藤田さん

 いかだが並ぶ広田湾の小友地域は、気仙川からの水と海水が混ざるプランクトン豊富な気水域で、おいしいカキが育つ。用途によって求められるカキの状態は様々だが、常に心がけているのは「よいカキを届ける」こと。殻付きのカキは出荷する際に中が見えず、買い手はカキの状態がわからないまま購入することになる。そんな関係だからこそ、「下手なものは出せない」と藤田さんは語る。

海が変わった


 地震が起きた時、ちょうど海に出ようとしていたところだったが、引き返して消防団の活動を始めた。船はもちろん、作業場、加工場、いかだなど、全て流されてしまったが、津波が引いた後、消防団の活動中に自分の船を見つけた。買い直すことも考えたが、使いなれた船がいいと修理することを選び、現在もその船に乗っている。
 「千年に一度の大津波、と言われているが、私は、海が千年前に戻ったと感じている。震災後、カキの育ちが良く、貝毒やノロウイルスなども出ていない。津波によって人も建物も大きな被害を受けたのは確かだが、津波が海底の掃除をしてくれたことで良いカキが育つ漁場になった」

カキフライカレー


 店内では、カレーライスにカキフライが乗った「カキフライカレー」も味わうことができる。何と、このカレーのルーを作っているのは藤田さん自身だそう。「味や食感にもこだわっていて、カキフライをルーに付けて食べられるよう、水加減や材料を試行錯誤しました」
カキフライカレーが地元紙「東海新報」に載る

 カキの養殖だけでなく、メニューの開発にも研究熱心。そんな藤田さんに、中心市街地に出店して変わったことを尋ねた。
 「来店するお客さんの数もあるが売上が増えました。飲食の売上よりも発送の売上のほうが多い時もある。カキを食べて美味しいと思ってくださった方が発送の注文までしてくれる。また、カキ小屋をやっていると養殖作業では得られない『お客さんとの会話』ができるので嬉しい。相手の顔が見える関係というのは『よいものを提供したい』という思いを一層強めてくれます」

若者に向けて


 カキ養殖の傍ら、後継者の育成にも力を入れている藤田さん。地元のこどもたちだけでなく外の人材にも目を向け、養殖業を担ってくれる若者を探しに仙台や東京まで足を運ぶそう。「みんなで後継者を育てていく」と語る藤田さんに、若者に向けたメッセージをうかがった。
 「どんなことであっても自分がこれだと思ったことは最後まで突き進んでもらいたい。たとえ、それが失敗に終わったとしても。
 そして、これは若者に限ったことではありませんが、この記事を読む方には『ぜひ一度、広田湾の海産物を食べてください』と伝えたいです」
船の操縦をして養殖いかだまで案内している様子

 食べる人のことを第一に考え、出荷のギリギリまでカキを美味しくするための努力を惜しまぬ藤田さんのカキ。この記事を目にした方はもちろん、それ以外の方にも「美味しい幸せ」を伝播していただきたい。

インタビュー先


▷店名:かき小屋 広田湾
▷営業時間:11:00~14:00(以降、予約)
▷定休日:火曜日 電話:090-8784-2114(問い合わせ番号)
▷住所:陸前高田市高田町馬場前106-2
▷URL:http://www.hirotawan.com
【取材相手】藤田敦さん
【取材日】2019年9月10日

インタビューの感想


 普段漁師の方と接することがないのでどのような方なのかドキドキしていましたが、実際にお話をしてみると、とても気さくで研究熱心な方でした。カキの養殖、カキ小屋のメニュー、後継者の育成など、カキに関わることはどれにも力を注いでいらっしゃいました。食べた人を魅了してやまない藤田さんのカキは、たくさんの熱い思いがたくさん詰まった宝物のようなものだ。
 ぜひ、一人でも多くの方にこのカキを楽しんでいただけたらと思います。
(岩手大学 石橋奈那子)

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